生きよう

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2012.06.28 Thu 生きよう

扉の向こうで、妻と長男の話す声が聞こえた。

「でも、よかったよ。おじいちゃん俺があげたお菓子喜んでくれて。」

先日、修学旅行から帰って来た長男が、

メープルシロップの入ったクッキーをお土産に渡した。


「おじいちゃん、とも君がくれたクッキーおいしいって、

誰にもあげないでくれって、毎日、一枚づつ食べてたのよ。」

休みの日、実家で夕飯を食べている時に、母が言った。


カナダから抱えて持って来たお土産だけれども、

妻と買い物に行ったコストコにも、山のように売られていた。

俺はパソコンに向かいながらも、隣の部屋に聞こえるように言った。

「それはお菓子じゃなくて、ともやが買って来たからだよ。」



2012.06.27 Wed 生きよう

まともに歩けなくなった親父を、病院に連れて行った。

脳梗塞でやられてなかった方の足が、ジカジカと痛いという。

小便も少しづつしかでなくなったという。

自分の容態を、震える左手で、チラシの裏に箇条書きして、

診察の際、女医さんに伝えようとしたが、

老人の話は長くて、分刻みに働く医者には迷惑なのか、

「ちょっと、貸して下さい。」と、にっこりと奪われる。

「字が汚くて、読めないかもしれませんが、、。」

「大丈夫ですよ、良く読めますよ。」と、パソコンのキーボードを打つ。

ほどよく返されたチラシの裏に書かれた、蛇のような文字が、

哀れで、切実で、無情にのたうちまわっていた。

「泌尿器科も予約しときますか?」

老いた身体が、薬漬けになっていく。

2012.06.26 Tue 生きよう

四つ葉のクローバーを会社の芝生の隅に見つけた。

偶然に、ひとつだけでなく、ふたつも、、。

取って押し花のようにしようか、娘にプレゼントしようか?

そんなことを考えたけれど、どうせすぐに枯れてしまうなら、

そのままにしておこうと、ひとり秘密の場所にした。

数日後、芝生がとてもきれいだったので、

ハッとしてその場所に行った。

もうすべてが芝刈り機に刈り取られた後だった。

とても悔しかった。

なんかよくある人生みたい。

俺の人生みたいかな、、。

2012.06.20 Wed 生きよう

仕事から帰って来て、キッチンに山のように溜まった

汚れた皿を洗った。

シャワーを浴びて、酒を飲んで酔っぱらって、

洗濯機を回して、洗濯物を物干しざおに干した。

冷蔵庫にある、冷えた豚肉や生野菜を食べながら、

ボクシングを見た。

元世界王者がパンチドランカーのように喋っていた。

世界戦よりも、その声の方が胸を捩じった。

子供達は好き勝手に、テレビなぞを見て、

家事を手伝おうとする気配もない、、、。


昨日、台風の中帰ってきたら、バルコニーに物が沢山残っていた。

長男と喧嘩した。

「お前、ガラスが割れたらどうするんだ。

ふざけるんじゃねぇ。」

「うるせぇーなぁ。ちゃんと俺は、確認したんだよ、

入れるもの、無いかって。」

「そんなの見れば分かるだろう。」

台風で開けずらい窓を強引に開けて、びしょびしょになりながら、

外のものを入れた。

妻が濡れたリビングを、申し訳なさそうに雑巾で拭く。

朝には、入れなかった大きめの植木鉢も倒れて転がっていた。

びしょびしょになっても、入れてて良かったと思う。


仕事が遅番の女房が、買い物袋を両手に帰って来た。

俺はピカピカにした台所と、干した洗濯物を指差して、

褒めて欲しい子供のように、だけどさりげなく、

「帰って来る五分前までかかっちゃったよ。」

そんなどうでもいい事を言って、

一人自分の部屋に戻ってビールを飲んでる。

2012.06.17 Sun 生きよう

今日会社に行く途中、駅前のパチンコや。

ゲロを紙で拭いてるおばさん。

60歳くらいかな?

傍らで指示してる先輩格のババァ。

「もっと、きれいにふかなくちゃだめだよ。臭いんだから、、。」

駅前だから、酔っぱらいがゲロ吐く。

新人の60過ぎたおばさんが、

両膝ついて掃除してる。

何も手で拭かせなくったっていい。

モップか何かないのか?

嫌がらせのようにも見える。

他人のゲロなんて掃除したい奴なんていないよ。

だけど必死に、黙々と拭いている。

最近、生活保護を貰い得みたいに、もらって、

生活している人の話を良く聞く。

どうしようもない奴はいっぱいいるんだな。

男がいてほとんど一緒に生活しているのに、

その男の子供を産んで、籍も入れずに、

母子家庭みたいに偽って、手当をもらう奴とか、、、。

大阪のどこ?

税金の半分が生活保護に消えていくって。

歳をとると、パートだって、アルバイトだって、

綺麗な仕事が、減って来る。

悲しい現実。

だけど、ゲロを拭いたって潔く生きたいし、

人を騙して、生きてる場所を汚したくない。

でも、その場に至って、ほんとうにお前はそう言えるのか?

他人のゲロを生きるために自分の為に、家族の為に拭けるか?

中途半端な俺は、偽善者にも、愛ある人にも、ナルシストにもなれずに、

素手でつかんだゲロを、指示する奴の顔の前に差し出して、

「お前も拭けよ。」と喧嘩売って、辞めてしまうだろう。

2012.06.15 Fri 生きよう

太陽の光を受けて成長する木々のように、

命を得て、生を当たり前に全身で享受する時期。

ある日ふと、死の匂いを嗅ぎ、徐々に自分の見知った人、

愛してくれた人を失い、死と言うものを改めて実感する時期。

自分自身の体の限界と終わりを感じ、

死をその身に照らし合わせて、主観的に感じる時期。

この国のシステムと時代の中で、僕は二番目の時期にいる。

2012.06.13 Wed 生きよう

子供は反抗期で目が尖がっている。

仕事は時に空回り、他人の事を思ってやったことも宙に浮く。

それなら楽に適当にと、、、そうしないから自分でいられる。

まだまだ頑張ろう。

俺はまだ頑張れる。


最近、心の中で決めた事がある。

「最近、俺、決めた事があるんだ。

女房に対して文句は言わないって、、。」

子育て、仕事、家事、、、。

そんな中で、俺にまで文句を言われたら、

きっと疲れる。

「お釈迦様みたいね。」と、妻は笑う。

2012.06.10 Sun 生きよう

先日、妻と父を病院に連れて行った。

足が痛くて歩けない父を車いすに乗せて、病院内を移動した。

桜の咲く頃はまだ少しは父も歩く事が出来て、

家の前の公園をのんびりと散歩した。

桜の木の前で立ち止まった。

花を見上げた。

「きれいだな。、、いこうか、、」

昔、台車の上にパッキンを載せて商品を運んでいた事もあるから、

車いすを押すのも、どうってことはない。

人や物にあたらない様に、車いすを楽々と押していく。

人生は旅のようだ。

だけど僕は、一人旅は好きじゃない。

どうやらそこだけは、父の遺伝子を受け継いだのかな?

2012.06.06 Wed 生きよう

通勤の行き帰りに、紫陽花とすれ違う。

またこの季節、雨と青空と紫陽花。

今年はどこに行こうか?

日々が色あせない様に、

笑顔、笑顔。

2012.06.05 Tue 生きよう

昨日は実家に行って庭の手入れをした。

植木剪みや鋸で、伸びすぎた木々を切った。

五月の盆栽の、枯れた花を取った。

父は最近、ほとんど歩けなくなった。

脳梗塞とヘルニアと下手な指圧師と痛み止めの注射のせいだと言う。

「俺って、親孝行だよな。」

「そうだな。俺は自分の思うように好き勝手に生きて、

その上、プライドばかり高くて。」

「こんな盆栽、面倒見切れないよ。

父さんが死んだら、人にあげるか、土に植えるか、」

結局、言葉とは裏腹に同じように面倒を見続けるんだろう。

2012.06.05 Tue 生きよう

長男がカナダから帰って来た。

楽しい修学旅行だったよう。

せっかく美人の高校生に話しかけられたのに、

英語が喋れずに「オーマイガット、ジャパニーズ。」

メープルシロップの香りがする我が家。

2012.06.02 Sat 生きよう

昨日の夜、ワインを一本空けながら結婚式のビデオを見た。

結婚式以来、初めて見た。

十八年が過ぎていた。

流れていく、夢も生活も思いも言葉も、そしてまわりの人々も。

照れくさくて、恥ずかしくて、押し入れの隅にしまっていた。

(あぁ、なんてみんな若くて輝いているんだろう。)

僕も妻も、父も母も、妹も、親戚も、友達も、、、。

そして、随分多くの人が亡くなってしまったんだな。

時はほんとうにあっという間に、過ぎていく。

戻れない、だけど繋がっている。

あれから僕には子供が三人できた。

時が経つのも悪くはない。

ここにいて、笑い声は絶えない。

18年前の僕が、顔を赤くして酔っぱらいながら最後のあいさつ。

なんか軽くて、とても頼りがいが無くて、別人のよう。

だけど思いは変わってないのかな。

「幸せになれるように、優しくなれるように、、。」

2012.06.02 Sat 生きよう

今日は娘の通う小学校の運動会。

朝からバタバタと家の中が騒がしい。

お弁当を作ったり、水筒に入れる氷の音がコロンと響いている。

「ももちゃん、頑張って。」と、体操着で出掛ける娘に声を掛ける。

玄関から「ねぇ、どこで待ち合わせする?」と、娘の声。

窓の外は、晴れ。

シャワーを浴びて、朝食をとったら、応援に出掛けよう。

2012.06.01 Fri 生きよう

会社から帰って来て、マンションの一階のインターホンを鳴らす。

妻が出て、「おかえりなさい、、まだももちゃんが帰ってないの。」

「ピアノかな?」

「そろばんだと思う。きっと、行くのが遅かったのよ。」

僕はマンションの中には入らずに、娘を探しに出た。

そろばん塾に向かって歩いて行った。

しばらく心配しながら歩いていると、遠くから少女が走って来るのが、

薄闇の中、ぼんやりと見えた。

娘だった。

娘は僕の所まで走って来て、ほっとしたのか、はにかむように笑顔を見せた。

「ママが遅いって、心配してたぞ。」

「だって、ピアノが終わった後、先生と次の予定を話していたらそろばんに行く時間が、、」

一緒に歩いて帰った。

出来るだけ、迎えに行こうと思った。

迎えに来られると嬉しいんだなと、あたりまえだけども感じた。